野崎参道商店街・カルチャー 「慈眼寺」
北河内エリアを結ぶ飯盛山。その山麓にある福聚山「慈眼寺」は、地元はもとより遠方からも参拝客が訪れる禅宗のお寺で、「野崎観音」の名前でも知られています。
慈眼寺の始まりは大変古く、開山したのは1300年以上も昔のこと。天平勝宝年間(749〜757年)、仏教僧・行基が「釈迦が初めて仏法を説いたハラナの地に似ている」という婆羅門僧正の言葉に感動し、十一面観音像を彫って安置したことが寺の始まりとされています。
慈眼寺はJR学研都市線野崎駅から野崎参道商店街を抜けたところにあり、約150段の石段を上ると、大東市はもちろん、大阪市まで一望できます。
開山当時と景色はかなり変わってしまったと思われますが、はるか昔、行基が立ったかも知れない場所から大阪平野を眺めていると思えば、感動がこみ上げてくるはず。
1565年の戦乱に巻き込まれて御本尊以外がほぼ全焼してしまったため、現在の慈眼寺は御本尊の十一面観音を除き、再建されたものです。再建は、まだ戦の気配が残る1616年になされましたが、1934年に関西を襲った室戸台風によって損壊し、1950年に移築されました。
移築されたといっても建物自体の歴史は古く、室町時代に遡ります。そんなお堂に気軽に入って参拝できるのも、開かれたお寺・慈眼寺の魅力の一つです。
堂内の壁は、19世和尚の友人が、構想から完成までおよそ30年をかけて描いた『花蝶菩薩』が彩っています。音楽に合わせて舞い踊るような菩薩たちの歓迎をのなか、観音様にご挨拶できるのも慈眼寺ならではのひと時でしょう。
副住職である杉山和尚は、「どんな願い事でもいいんですよ。お願いすることで、心の荷物を下ろす。そうして心を軽くすることができるのも、参拝のいいところですから」と、こう仰っています。
お願いごとといえば、ご利益が気になるところ。注目されているのは、縁結びをはじめとした子授けや安産の恩恵です。
本堂に向かって右手に小さなお堂があり、そこには平清盛のひ孫である妙が祀られています。妙は、「江口の君」としても知られ、女性を守る仏様なのだとか。毎月14日は妙の命日で、この日には全国各地から多くの女性客が詣でにやってくるそうです。
また、毎年5月初旬には、野崎参道商店街で「のざきまいり」を実施します。「のざきまいり」は、たくさんの露店が軒を連ねる、慈眼寺の伝統行事の一つ。
始まりは古く、元禄時代にまで遡ります。そんな歴史ある行事が現代に引き継がれていることからも、慈眼寺が人々に愛され、地域に深く根付いていることが察せられます。
飯盛山のハイキングコースの一画でもある慈眼寺。参拝も兼ねて、行基が見た景色を一度眺めてみてはいかがでしょうか。