岸和田駅前通商店街・まつり 「岸和田だんじり祭」
秋は五穀豊穣を祝う祭りで賑わいますが、大阪・泉州で有名なのが300年以上の歴史を持つ「岸和田だんじり祭」。江戸時代中期に岸和田藩主・岡部長泰(おかべながやす)公が、城内三の丸に京都伏見稲荷を迎えて開催した稲荷祭を始まりとする説のほか、祭りの起源には諸説あります。
その見どころは、祭りの名前にもある「だんじり」。南海電鉄岸和田駅周辺の22町それぞれが、自慢のだんじりと、曳行(えいこう)技術を披露します。
岸和田祭の開催時期は9月中旬の土日で、2日間にわたります。
1日目の「宵宮(よいみや)」は朝6時スタート。各町からだんじりが一斉に繰り出す「曳き出し」が始まり、「カンカン場」に集合して、決められた曳行コースへ。威勢のよい掛け声と、鳴り物と呼ばれる楽器の響きが調和するなか、町のハッピをまとった青年団がだんじりを曳いて走ります。
だんじりの大屋根の上で跳びあがったり、片足立ちをしたりする「大工方」は、祭りの華。スピードに乗るだんじりの上で行われるそのパフォーマンスに息をのみ、高さ約4メートル・重さ約4トンものだんじりが勢いよく街角を直角に曲がる「やりまわし」にハラハラするのも醍醐味です。
だんじり曳行のメインロードは岸和田駅前通商店街。だんじりの高さに合わせて約10.6mの高さに設計されたアーケードの下を、だんじりが駆け抜ける姿は壮観そのものです。
さて、2日目「本宮」は、朝9時の宮入りから。各町のだんじりが、宮入りが開催される岸城神社(きしきじんじゃ)へ次々と曳きこまれます。神社での神事が済めば、だんじりは再び曳行コースへ。夜は、火入れ提灯を飾っただんじりが姿を現し、幻想的かつ勇壮な姿を印象づけて祭りを締めくくるのです。
泉州で生まれ育った人にとってだんじりは欠かせない風物詩。「市外に住む岸和田ルーツの人は、お盆や正月に帰省しなくても、だんじり祭には帰ってきます」と笑う、岸和田駅前通商店街振興組合の理事長・永谷久倫さん。
長い伝統を守ってこられた要因の一つは、岸和田だんじり特有の運営方法にあると話します。
「各町のだんじりは、町会長、曳行責任者、世話人、若頭、青年団などで構成された町会が統制。各町から選出された『年番』たちで作った年番組織が全体を取り仕切り、曳行コースの整備や警備をしています。準備も1年がかりで、練習も5月頃から。練習では『気合入れぇ!』とよく言いますが、これは慎重にやれよという意味で、自分たちで安全な祭をつくるぞと心を一つにしているんです」。
岸和田だんじり祭は観覧席も用意されていますが、まちを訪ね、曳行コース沿いに見ることもできます。ちなみに、理事長のおすすめ観覧場所は「臨海にある『疎開道』。直線も、やりまわしも見られます」と教えてくれました。
少子高齢化や若者の地元離れがありながらも、この地に生きる人々が守ってきたお祭り。ぜひ訪れてその魅力にふれてみてください。