ファミリーロード・「安中新田会所跡 旧植田家住宅」
江戸時代、各地で行われた新田開発。開発が行われた場所には、管理事務所的な役割を果たす会所も建てられました。こうした会所跡がほぼ残っていない現代において、八尾市の「安中新田会所跡 旧植田家住宅」は貴重な歴史遺産です。
大和川の付け替え後に開発された安中新田を管理したこの会所屋敷は、江戸時代以降は住居として使われていましたが、2005年、居住していた植田家が八尾市に土地、建物、収蔵品を寄贈したことで、翌年に国登録有形文化財かつ八尾市指定文化財並びに史跡となりました。
江戸時代後期に建てられた主屋の古い柱や梁といった骨組みは当時のままですが、時代ごとに改築・増築が行われ、トイレとお風呂は昭和時代初期に造られたものなのだとか。
建物のなかでは、茶道具が彫られた欄間、鶴を描いたふすまなど、趣のある装飾が見られます。掛け軸や道具は植田家で実際に使われていたもので、屋敷の雰囲気にしっくりと馴染んでいます。2階ではカマドで使用する薪の貯蔵風景が見られ、1階の土間ではかまどや七輪と、懐かしい調理道具の展示も。
植田家の収蔵品を活用した生活道具の展示など、展示室では企画展も常時開催されています。第1土曜日には糸車体験、第3土曜日には昔遊び体験を実施しています。
このほかにもイベントは多く、落語の会やお茶会、石臼で珈琲豆を挽く「石臼珈琲体験」を開催。なかでも座敷に和紙スクリーンを置いて影絵を投影した「錦影絵」のプロジェクトは好評でした。
季節ごとに座敷のしつらえ替え、3月は7段飾りの雛人形、5月には五月人形を飾る「旧植田家住宅」。時折、遊んだり宿題をしに訪れる子どもたちの姿も見られるそうです。
冬は寒いものの、夏は風通しがよくさわやか。現在の高機密性の家とは異なる体感も、歴史ある建物の面白さの一つです。江戸時代から続く希少なお屋敷跡で、懐かしい日本を感じてみてはいかがでしょうか。