「壽酒造株式会社」
淀川から北の地域は昔から水がおいしく、さらに高槻市近辺ではおいしいお米がたくさんとれたそうです。壽酒蔵は富める田、まさに「富田」の地で1822年、「橋本栄作商店」の名前で創業しました。阪急京都線の富田駅から徒歩約5分の壽酒蔵は、1時間におよそ900リットル湧き出る井戸水を使い、日本酒「國乃長」をはじめ、クラフトビールや焼酎を作っています。
「この土地の酒造りを後世に伝えねば」という並々ならぬ思いから創業した初代は、作った酒を國乃長と命名しました。その意味は、摂津の国一番の酒。1700年代の最盛期には20数件あった酒蔵も、灘や伏見の酒に押されて衰退していたそう。そんな状況から酒蔵を立ち上げた点からも、初代の心意気が感じられます。
現在は、7代目の橋本憲治さんが家業を盛り立てています。橋本さんが入社した1995年に酒税法が改正され、壽酒蔵は大阪で初めてのクラフトビール製造をスタート。さらに2006年には、大阪唯一の焼酎を完成させました。
橋本家の家訓は「あたらしもんずきであれ」。新しいものが好きで、ピンときたらまずやってみる。あかんと思ったら引き返せばいい。コロナ禍に蔵の敷地内で「クラノミ」を開店したのも、この教えがあったからだといいます。
ところで1970年の万博が開かれた当時、当時57歳だった橋本さんの祖父は、20回以上も会場へ通い、数多くのグッズを買い集めたそうです。
2025年、橋本さんも57歳を迎えます。「祖父と同じ年齢で巡ってくる大阪での万博に、何か運命のようなものを感じる」と微笑む橋本さん。かつてのおじい様と同じく、万博を楽しみにしています。