藤井寺一番街商店街・カルチャー 「紫雲山 葛井寺」
藤井寺一番街商店街からほど近い、紫雲山葛井寺にやって来ました。
西国五番札所としても知られる葛井寺は、7世紀前半、百済からの渡来人葛井氏が創建したといわれています。朝廷から葛井連(ふじいのむらじ)の姓を賜る前は、白猪を名乗っていた葛井氏。のちの姓を取って、お寺は葛井寺と名づけられました。
山門に向かって一礼し、まっすぐ進んで見えてくるのが本堂です。その手前には大きな香炉があり、のぞいてみると文字が描かれた線香が細い煙を漂わせていました。
これは祈願線香といい、「金運上昇」「商売繁盛」「家内安全」「開運招福」といった祈願を込めて捧げられるもの。火を灯し、線香を香炉に並べて手を合わせると、気持ちもすっと穏やかになります。
本堂の奥におわす本尊は「十一面千手千眼観音菩薩」です。725年、聖武天皇の勅願によって制作され、現在では国宝とされています。
いわゆる「千手観音」ですが、多くの千手観音が四十二手(42本の手)であるのに対し、葛井寺の本尊は1,041本の手をお持ちです。ここまで細かく手があるものは日本で唯一。とても稀少な千手観音様なのです。
「各時代の人々が命がけで、御本尊を戦火や天災から守ってきました。制作期間も長く、親子2代の仏師が50年ほどかけて彫り上げたとか。手の精巧さなどはとても真似できず、レプリカも作られていません」と、副住職の森 祟紘さん。
1,000以上の手のひらには、一つひとつ眼が彫られています。千の手・千の眼が、「人間のあらゆる欲望を見通し、愚かな願いを真の幸せに通ずる祈りに高める」といわれています。
本尊の千手観音が開帳するのは、毎月18日のみ。その日に訪れ、厳かな姿に向き合ってみてはいかがでしょうか。
また、本堂ではお守りやだるまのおみくじを買うこともでき、境内では弘法大師の像、専心龍乗観音菩薩立像にも出会えます。
葛井寺では季節の行事も行われていますが、とりわけ見ごたえがあるのが、春の藤まつり。境内の藤棚が紫や白に染まり、なんともいえない美しさです。1月には大般若経が唱えられる初観音会、年末には長寿大根だき、大晦日には除夜の鐘も行われます。
毎月の仏事としては、18日の本尊ご開帳の観音会のほか、月3回(8日、18日、28日)、大護摩祈祷も行われます。護摩木を焚き、太鼓の音と信者さんの読経が本堂に鳴り響く様子に、大きなパワーをもらえるはずです。
副住職は、「行事の日は華やかですが、平素はとても穏やかなお寺です。もともとは葛井寺の参道でもあった藤井寺一番街商店街をのんびりと歩いて、心を浄めにお参りに来てください。境内には喫茶店もあるので、ゆっくりと憩うこともできますよ」と話してくれました。
現在、令和の大改修として、阿弥陀堂とそのなかに安置される阿弥陀三尊と二十五菩薩像が改修中。開創1300年となる2025年には、新しい姿を見られる予定です。
貴重な千手観音様に守られてきた由緒あるお寺を、ぜひ訪ねてみてください。