宮之阪中央商店街・大倉畳襖店/畳製作一級技能士 大倉 健司さん

昭和46年に創業した「大倉畳襖店」。先代である叔父がこの地で営んできた店を、二代目健司さんが丁寧に守り継いでいます。長年、父親も大阪市城東区で畳店を営んでいた過去があり、家族の商いは二つの地域をまたいで長く続いてきました。そうした背景もあり、幼い頃から畳という仕事が身近な存在だったといいます。

健司さんは、大学卒業後、「営業を覚えておけ」という父の言葉に背中を押され、広告・人材関連の会社でサラリーマンとして働く道を選びました。その後、平成11年に家業を継ぎ、工務店の現場から個人宅まで、近畿一円どこへでも駆けつける職人としての道を歩んできました。

「和紙畳や樹脂素材、カラー畳など新しい素材の登場で選択肢は広がってきましたが、畳の需要は時代とともに減り、工務店からの仕事も以前ほど多くはないのが現状。昔ほど儲かる仕事ではないけど、お客さんが“きれいになったわ”と言ってくれるのが何より嬉しい」と熱く語ってくれました。

近年は畳職人の高齢化も進み、手縫いの技を持つ職人は少なくなりました。自身は「畳製作一級技能士」を取得し、子どもたちが畳づくりに触れる機会にも積極的に参加。日本の住まいの文化を伝える活動にも力を入れています。

商店街との関わりは、先代から受け継いだ大切なつながり。高齢化が進む一方で、新しい店も少しずつ増えつつある。「嘆いていても始まらない。みんなで前向きに頑張るだけ」と笑う職人の姿に、長く地域で愛されてきた店の強さがにじみます。

畳の香りに包まれた工房には、今も静かに昭和の面影が息づいている。職人の手で受け継がれてきた技と、地域へのまごころが生み出す一枚の畳。その価値を、次の世代へと確かに手渡していく姿に静かな感動を覚えました。