香里ダイエー本通商店街・「喫茶いぶき」店主 高田 勝司さん
香里ダイエー本通商店街はその名の通り、京阪電鉄香里園駅前に出店した当時国内初の郊外型大規模スーパーマーケットの周辺に発達した商店街です。スーパーができたのは昭和43年(1968年)。「喫茶いぶき」はその4年前、昭和39年(1964年)に開店しました。現在の店主、高田勝司さんはその2代目です。
当時はまだ、駅前に「商店街」と呼ばれるようなものはなく、周囲にも3つか4つ程度の店があった、長閑な田園地帯でした。国道を渡った向かい側の会社へ通勤する人たちが、お店のお客さんだったそうです。
お店の自慢はブレンドにこだわった美味しいコーヒーですが、特徴的なのは食事メニューのほぼ全てがパンだということ。メニューブックにはトーストやサンドウイッチなど、様々な美味しそうなパンの写真が並びます。以前はもっと色々な種類の食事やアルコールも出していたそうですが、周囲に飲食店が増えて競合するようになったことや、常連さんのニーズ、また食材のロスを抑えるという意味もあって、今のメニューにしたとのことです。時間帯を問わずにモーニングが食べられる、また軽い昼食としてちょうどいい、といったふうに評判も上々だといいます。
店内は大きなカウンターとテーブル席の洒落た雰囲気。実はこれ、創業当時のままではなく途中でリフォームされたそうです。「昭和55年(1980年)でしたか、知り合いのデザイナーが店舗のデザインをさせてくれ、言うてこういう形になったんです。当時はコンクリート打ちっぱなしが流行ってた頃でね。コンクリートそのままで。その後、娘が色を塗って今はこんな感じになってます」
平成19年(2007年)にスーパーが撤退して、辺りの様子も変わりました。「商店街の組織の中でも、商店街名変えた方がええんちゃうか、ゆう話も出ましたけど、いやいやあのスーパーがあってこそ生まれた商店街でお世話になったんやから、ここに有ったということを残すためにもこのままにしよ、ゆうてね。世の中にはスーパーができて寂れた商店街も多いけど、うちは逆でしたから。共存共栄でした」と、商店街名に込められた歴史と思いを語ってくださいました。
商店街の歴史を長年見てこられ、その歴史と思いを今に引き継ぐ。高田勝司さんは、まさにこの街の名物さんです。