千日前道具屋筋商店街「ゑびすや金物店」柴田勲さん
「子どもの頃からこの店で働く大人たちを見て育ち、当たり前のように務めるようになって、気がついたときには2代目を継いでいました」 ゑびすや金物店の柴田勲さんは、自身の今の立場をこんな風にあっけらかんと話します。若い頃は朝に夕にと納品先である各地の飲食店に車を走らせ、とにかくがむしゃらに今ある仕事をこなしていたとか。できたばかりの新御堂筋を通っていたときの夜景は、今も心に残っているそうです。
時代が変わるにつれ商売の環境は厳しくなっていくものの、料理道具とそれをつくる職人さんたちへの愛情は人一倍で、売れ残りの在庫がたまった空間は「私の個室みたいなものです」と笑います。日々の仕事では、誰よりも早く出勤して自分がシャッターを開ける、そして従業員を迎える。このことだけは、働き始めた頃から自身のこだわりとして続けているそうです。
お客様対応は、真面目なのか不真面目なのか、ナニワの商人らしくサービス精神が旺盛で、例えば「電子決済できますか?」と聞かれれば「偽札以外は大丈夫ですよ」と返して、場をなごやかに。「従業員にはよく叱られます」と苦笑いしながらも、「少しでも笑ってもらえたら私は満足です」とお話されます。
同商店街には幼なじみやお世話になった方も多いため、競い合うだけではなく団結していつまでも仲良く商売を続けていきたい、仕入れ先や職人さんともいい関係を築いていきたいと、これからの想いを打ち明けてくれました。