粉浜商店街「井川とうふ店」井川さん
井川清さんは明治43年(1910年)に創業した井川とうふ店の4代目。創業者である曽祖父・徳松さんの名前を冠した「徳松とうふ」と井川さんが初めて一からつくり上げた「すくい豆腐」が二大看板商品です。
井川さんは18歳頃から父親に豆腐づくりを習い始めてこの世界に入りましたが、「そのときは豆腐屋の息子のくせに豆腐づくりに興味も情熱もありませんでした」と振り返ります。「父から教わるままに、何も考えず豆腐をつくっていました。あるとき豆腐業界の組合で食べさせてもらった豆腐があまりにもおいしかったので、一体どうやってつくっているのかと思い、組合の先輩に聞いたら、つくり方を教えてやるから見に来いと言われました。そこから全てが変わりました」と井川さん。
その先輩から学んだことを持ち帰って試行錯誤し、お客さんにも試食してもらって意見をいただき、研究を重ねてようやく完成したのが「すくい豆腐」でした。初めて自分でつくった豆腐であり、豆腐づくりのおもしろさに気付かせてくれた存在です。
井川さんは、豆腐職人たちが懸命に奮闘している豆腐業界を、ずっと残していきたいと考えています。「うちのような個人商店を少しずつでも増やしていきたい。そのためには若者に本当の豆腐づくりをもっと見てほしいと思います。かつて私がそうであったように、豆腐づくりのおもしろさに気付いてくれる若者を増やしていきたいですね」と井川さんは語ってくれました。