黒門市場「みな美」秦一男さん
黒門市場の名物さんは、アーケードの中ほど、ふぐ専門店「みな美」の四代目、秦一男さんです。若い頃に鮮魚店で修業を積み、地元の貝塚市で居酒屋を経営した後、32歳でみな美の番頭に。三代目が亡くなった跡を継ぎ、現在に至ります。
「ふぐのことやったら任せて」と言う通り、取り扱う天然・養殖ふぐは厳選に厳選を重ねたもの。長崎県産を中心に、100%納得したものだけを仕入れています。最近は全国的に養殖の技術がかなり発達しているそうですが、特に長崎県はその歴史が長く、天然ものに迫るおいしさが味わえます。刺身から湯引き、鍋(しゃぶしゃぶ)まで、ふぐ料理に関してはプロ中のプロ。生け簀から上げてその場でさばいてもらうこともできます。
商品を眺めていると、いつの間にか秦さんの軽快なトークに巻き込まれています。その引き出しの多さはこちらが驚かされるほど。ふぐを紹介するテレビ番組に呼ばれ、そのときに出会った大物芸能人と「数十年来の友達になった」という話も頷けます。
インバウンドで海外からの観光客が大勢訪れたときには、辺りで立って食べる外国人が続出したそうです。商売人として繁盛したことは嬉しいものの、「かわいそうや」と店先に椅子つきのカウンターを設置し、刺身と、はもの湯引きはイートインできるようにしました。
「いいものを、良心的な値段で食べてもらうのが黒門市場」と言い切る秦さんは、楽しさと優しさを兼ね備えた、まぎれもない商店街の名物さんです。